限りなくブラックに近いブルー。

基本、月曜日更新。

「感動ポルノ」について自分なりに考えてみた。

私がまだ二十代だった頃の話。
縁あって、知的障碍者が入所する施設のボランティアをすることになった。
といっても、私たちに出来ることは限られている。
或る程度の期間常駐出来るならまだしも、それぞれに仕事がある故せいぜい休日を利用して顔を出せるかどうかだ。
そんな訳で、私が手伝ったのは毎年行われているイベントのお手伝い。
入居者(とその家族)には予めチケットを渡してあって、それと引き換えに食べ物などを提供するのだ。
当然、メインのブースは職員が担当している。
私たちボランティアが担当したのはチョコバナナのブース。
ここならさほど多くの入居者が来ることもないし、素人でもどうにかなると考えたのだろう。
作り方は極めて簡単。
大きな鍋にチョコレートを投入し、クリーム状に溶かしておく。
バナナは縦に半分に切り、それぞれ割りばしに刺しておく。
後は適当にバナナをコーティングし、仕上げに飾り用のチョコレートを振りかけるだけ。
正直、自宅でも簡単に作れるじゃん…と思ったことを覚えている。
実際にはチョコレートを溶かす時に幾つか注意点があった筈だが、そんなことはすっかり忘れている。
残っているのは「楽しかった」記憶だけだ。
それでも、実際に入居者の人と接する訳だから、それなりに現実を目の当たりにしている。
自分たちの悩みがちっぽけなものに思え、何かすべきことがあるのでは?と思い悩む。
そう簡単に答えが出る筈もなく、陰鬱な気分が私を支配していた。
この時、当時付き合っていた人から言われたことがある。
「ボランティアをすることは決して悪いことではない。
けれど、必要以上に寄り添ってはいけない。
感情移入するのは仕方ないけど、そうすることであなたまでがおかしくなる嫌いがある。」と。
おかしなことを言う人だな、と当時の私は思った。
今でもその真意を理解しているとは言い難いだろう。
けれど、web上で「感動ポルノ」なる言葉に出会った時、あの人の言葉があながち的外れではないことを認めざるを得ない。
これでもかと言わんばかりに頑張っている障碍者を取り上げるマスコミ。
その姿に感動しながら、自分も頑張らなくては…と自らに言い聞かせる私たち。
紹介する側には悪気がなく、情報を受け容れる側にも悪気はない。
ただ心の何処かに「感動を求める気持ち」があって、それらを満たす為に「頑張っている障碍者」を欲している。
「いや、そんなことはない。」とあなたは言うだろうか。
「あまりにも穿った見方ではないか。」と抗議するだろうか。
正直、今の私には「穿った見方」と言える勇気がない。
例えそれが無意識であっても「自分の欲求を満たす為に」他人の生き様を蔑にしてきたのは事実であり、ではどうすればそうした感情を切り離すことが可能なのか、自分でもわからないのだから。